まちなかアート探索

まちのなかにある美術作品についてあれこれ書きます。主に福岡、ときどき他のまち。

ドルヴァ・ミストリー 《木の精》

体と木のライン

 

百道浜の地行中央公園です。

写真が下手でピンぼけしていて申し訳ないです。

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裸体の女性が右斜上を向き、足をクロスさせて立っています。

左右の手の長さと足の長さが違うのにバランスがとれて見えます。

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左の木と融合しているようです。

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髪の毛が木とつながっているというか、木から髪の毛が生まれ、人の姿にしているように見えますね。

 

20世紀後半の彫刻

 

作者はドルヴァ・ミストリーです。 

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この作品は1988-90年に制作された作品です。

20世紀後半の彫刻での大まかな流れというと、1960年代後半ぐらいからミニマル・アート作品が多く制作されるようになっています。ミニマル・アートとはアメリカで興った作風で、均質で単純な形態を特徴としています。

ミストリー自身、例えば彼の《物体Ⅱ》という作品のように、ミニマル・アート作品を制作しています。

1980年代から90年代になるとフェミニズムや身体表現に対する意識が高まる流れがあったとも言われています。(『20世紀の美術』美術出版社、2013年、p179)

ミストリーの《空間の図表》という作品では、ミニマル・アート作品ほど単純化されてはおらず、女性の胸のふくらみや手足の質感も表現されています。

 

今回の《木の精》では、女性の身体が豊かに表現されており、女性の表現の仕方は彼が彫刻ではなく絵画でも表現してきた女性像(《マヤ・メダリオン》など)に近いとわたしは感じました。

 

木と髪

《木の精》では女性の束ねた髪の毛が木と融合しているように見えます。

髪の毛は古くから生命力の象徴と考えられてきました。

インドのブラーフマナ文献にも、祭式に用いる草から作った煉瓦に関するところで、創造主の毛が地上にばらばらに落ちて植物になったのだと説明されています。

このような、髪から生命が作られるという思考が、《木の精》でも表現されているのかもしれません。

  

ドルヴァ・ミストリーについて

 

彼は1957年インド西部グジャラート州のカンジャリに生まれました。

その後、インド、バローダのM.S.大学美術部で彫刻を学び、修士号を取得しました。さらにその後、1981 年から83年にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程で彫刻を学んでいます。

現在彼はインドのヴァドーダラーで制作に励んでいます。

彼の作品はHPにも年代ごとに掲載されているので、作品の変遷をおっていくとまたおもしろいです。http://dhruvamistry.com/index.htm

 

参考文献

福岡市美術館『ドルヴァ・ミストリー展』(アジア現代作家シリーズⅦ)、福岡市美術館、1994年

風間喜代三『ことばの身体誌 インド・ヨーロッパ文化の原像へ』、平凡社、1990年