まちなかアート探索

まちのなかにある美術作品についてあれこれ書きます。主に福岡、ときどき他のまち。

中村晋也 《春を奏でる》

f:id:yukina_na:20141117153555j:plain

f:id:yukina_na:20141117153621j:plain

f:id:yukina_na:20141117153606j:plain

f:id:yukina_na:20141117153632j:plain

 

春の妖精

 

福岡の西鉄天神駅のそばに、福岡に住む人ならおそらく誰でも知っている警固公園という公園があります。

天神の中心部の公園で、クリスマスシーズンのイルミネーションは有名です。

 

そんな公園に佇むのが、中村晋也作《春を奏でる》です。

裸体の羽が生えた女性はおそらく妖精で、バイオリンを奏でています。

タイトル通り、春の訪れを迎えているのでしょうか。

腰をくねらせてバイオリンを演奏する姿は大きな動きで生き生きとしており、女性の表情は真剣そのものです。

※今回の写真はクリスマス前に撮影したものであるため、彫刻の背後にある黒い布で覆われたものはクリスマスイルミネーションの設営中のものです。

 

中村晋也と祈り

 

作者の中村晋也は宮城県にある文化体育センター「ホワイトキューブ」にも、作品を二つ置いています。

タイトルは《春に奏でる》と《春の調べ》となっていて、今回の作品と同様、裸体の羽が生えた女性が楽器を奏でています。

 

また、彼の作品で有名なのは、大レリーフ《愛の国伝説》、そして《薬師寺十大弟子》などがあり、神や人間、仏などに深い関心を抱いていることがわかります。

個人的な感想ですが、上記の作品はインターネットや図録で見ただけでも迫力があり、わたしは大変感銘を受けたので、いずれ是非本物を見に行きたいと思っております。

 

中村晋也自身、長年にわたって「神とはなにか?」「人間とはなにか?」「仏とはなにか?」を考え続けてきたと述べており、その考えが作品にも現れ出ていると感じました。

また彼は、「子どものときに体験した戦争や淡路大震災などを通して突き動かされた祈りや鎮魂の思いは今も変わりません」とも述べていて、今回の《春を奏でる》は中村晋也の思いを考えると、まさに精霊が人間に祈りを捧げているようにも見えました。

 

作者の経歴

 

中村晋也は1926年に三重で生まれました。

1966年にフランスに留学し、アぺル・フェノサに師事しています。

また、1949年に鹿児島大学に勤務したことによって、鹿児島との縁ができ、作品作りの拠点を鹿児島にして活動されています。

鹿児島駅を降りるとすぐに、彼の作品である《若き薩摩の群像》が出迎えてくれますし、中村晋也が制作活動をしているアトリエのそばには中村晋也美術館もあります。

1000点を超える作品群があるらしいので、こちらにはぜひ足を運んでみたいと思います。

 

参考サイト

公益財団法人中村晋也美術館

http://www.ne.jp/asahi/musee/nakamura/index.html

『いぬはりこ通信vol.12』2010年、ジャクエツ

http://www.jakuetsu.co.jp/jkmagazine/documents/inuhariko12.pdf